なっちょこ
小学校の頃、2つの団地の地域の子供が同じ小学校に通っていおり、人数がとても多かった。
新たに小学校が建設され、小学3年生から2つに分かれて人数が約半分になった。
分かれた先にケンカ最強の「なっちょこ」がいた。
一緒のクラスじゃなかったから、存在しか知らなく、廊下ですれ違っていたかもしれないが、実際に見たかどうか覚えていない。
通っていた小学校に体格が大きく、ケンカの強い2人がいたが、それ以上に強い存在という噂が流れていた。
ある日、友達5、6人で隣の団地に自転車で遊びに行った際、なっちょこと道端でばったり出会ってしまった。
向こうは1人で、こちらは5、6人なのに、時間が止まったようなピリッとした時間が流れた。
当然、ケンカになったら負けると全員、思ったことだろう。
5、6人の中で、一番体格のデカい奴が声を掛けた。
それからしばらく一緒に行動し、土手を登る際、なっちょこが全員に手を貸してくれ、親切なのにみんな驚いた。
噂が先行して、とんでもなくケンカが強いとだけ流れていたので、出会った時点でやられると思っていた。そう、クマみたいな存在のイメージだった。
でも、実際は優しくてギャップに驚いた。
中学で再び一緒になり、強すぎるのか恐れられて友達ができない感じだった。
よって、怖いもの知らずの私は1年生の頃、普通に話し掛けていた。
以前に出会った時の優しいイメージがあったからかもしれない。
でも、次第に徒党を組むようになり、当然、リーダー格になっちょこがいた。
東京リベンジャーズでいうマイキーみたいな存在になっていった。
顔は金八先生に出演していた加藤優みたいな鋭い目つきだったが。
その集団に目をつけられた奴は悲惨なものだった...。
同じクラスに転校生の女の子がやってきて、綺麗だけど、もろヤンキーの風格で、次第になっちょこの彼女になった。
高校生になり、その彼女だけ一緒の高校に通った。
高校3年生の頃、誰かがなっちょこのことを「大したことない」と言ったみたいで、それを聞いた彼女が当然、なっちょこに伝え、◯◯狩りが始まった。
◯◯は、高校の名称。
目をつけられた奴も一緒の高校だったが、すでに退学していた。
1年生の頃、いきなり強そうな奴に喧嘩をふっかけ、負けたうえに先生から坊主頭にさせられ、停学後、自ら退学した。
進学校だからヤンキーはいなかったが、ちょっと悪そうな感じにしている奴らはいた。
そいつらが、駅などで待ち伏せされてやられた。
日に日に骨折したり、顔が青アザになっている奴らが出てきて、私が「どうした?」と聞いても教えてくれなかった。
だから、詳細を知ったのは随分後だった。
そういえば、通学路の帰り道になっちょこの仲間が歩道の真ん中で構えて立っていた。
私は幼い頃に遊んでいた奴なので、手を振っていたが、ちょっとでも悪そうな奴を捕まえてボコボコにしていたみたい。
次第に収束したようだ。
それ以降は、成人式で見かけたくらいで、その後どうなったか知らない。
今、なっちょこの名前をネットで検索してみたら、地元近くの設備会社の社長の名前でヒットした。
もし本人だったら、真っ当な仕事をしていたのでホッとした感じだ。
的場さん
中学生の部活の2こ上の先輩に、的場さんがいた。
1年と3年では、体格が違い過ぎて、大人と子供ほどの違いを感じていた。
3年生は早めに部活を引退するので、交流は少なかった。
その的場さんは、周りの中学に名前が知れ渡るほど、ケンカが強くて有名だった。
最初に話した時は、めちゃくちゃ緊張したのを覚えている。
でも、後輩想いで気軽に話しかけてくれた。
とある大会の帰り、田舎のデパートのゲームセンターにみんなで立ち寄った。
そうしたら、一番小さな同級生がカツアゲに合い、泣いていた...。
私がデパート内に的場さんが居たのを見かけていた。
数人で的場さんを探しに行って発見し、事情を説明したら、先輩3人が勢いよく走り出し、ゲームセンターへ向かった。
怒った的場さんを見るのが初めてだったから、私のテンションは爆上がりだった。
カツアゲした奴はゲームをしており、先輩3人はそいつを囲んで座った。
「おい、俺の後輩に何かしたらしいな!」と問いただした。
ゲームセンター全体に緊張感が走った。
カツアゲした奴は、青ざめながら無言でゲームをし続けている。
その状況でよくゲームを続けられるなっと思ったが、どうしていいかわからなくなったのかもしれない。
お金を取り返して終わったが、個人的には的場さんの強さを見たかったので、ボコボコにしてほしかった。
的場さんには妹がいて、同級生だった。
的場さんはワイルド系のイケメンなのに、同級生の女の子は正直、ブサイクだった...。
なぜか「にょ、にょ〜」っていう口癖で、普通だったらいじめられそうな雰囲気だが、兄の存在が大きく、その子をバカにする人は誰もいなかった。
そして、的場さんは卒業し、私は電車に乗って塾へ通っていた。
立って外を眺めていたら、的場さんが高校の部活の集団におり、ランニングしているのが見えた。
すでにリーダー格なのか彼を中心に走っていた。
結構、距離があったのに、的場さんと目が合い、こちらに手を振ってきた。
別の知り合いが電車に乗っていて、そちらに手を振っているかもしれないが、私だったらいけないと思い、軽く会釈して、小さく手を振った。
そうしたら、一緒に走っている人たちにも手を振れっと言っている様子が見え、20名くらいが電車を追いかけながら手を振ってきた。
「まじか」と思い、恐縮しながら私も小さく手を振り続けた。
それが、的場さんを見た最後の姿だった。
今思えば、的場さんともっと仲良くなっていたら、楽しくもハードな生活を送っていたかもしれない。
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