ゲンサク

元気炸裂のゲンサクです。日常の体験談や話題のニュースをお届けします。

世にも奇妙な物語でありそうな話。その1

短編集のZINEを作ってみようと考えていた時、夜中に書いたシナリオ。
おもしろい話を思い付いたっと思って書いたが、どうなんだろう?
世にも奇妙な物語でありそうな話になってしまったのでZINE制作はヤメた。

3つの願い

寒さが身にしみる冬の夜。街にはカップルが寄り添って歩き、幸せそうに微笑みながら話している。      
もうすぐクリスマス。街は光り輝き賑やかだが、私は今年もシングルベル。
派遣の仕事も来春で打ち切り。その後の予定はまったく計画が立っていない。
短大を卒業して3年間、派遣の仕事だけしかやっていない。
定職に付きたい気持ちはあるが、とくに何がやりたい職種がなく、毎日をただなんとなく過ごしていた。

夜は知り合いの居酒屋で飲んだ後、たまに占いを見てもらう日々が多い。
今日は煮魚にしようかなっと考えながら居酒屋へ向かっていたら、いつも誰も居ない場所に占い師がいた。
見かけない占い師で、老婆のようだが、ほっかむりしていてよく見えない。
西洋の占いなのだろうか、紫の服で身を包み、怪しい雰囲気で溢れている。
私は、こういった怪しいのが結構好き。
人が並んでいないし、今日は占いを先に見てもらおうと決めて訪ねた。
「あの、いいですか?」
頭が少し上に動いたが、よく顔が見えない。
「あぁ、どうぞ。」
右手を差し出し、座るように促された。
座っても暗くて、表情がよく見えないが老婆で間違いないようだ。座った途端、周りの賑やかな音や明かりが遠くに感じた。
ゆっくりと遅い動きで、タロットカードを取り出してテーブルに横一列に拡げた。
「一枚、引きなさい。」
見たことのないタロットカードで、かなり古そうだ。
「何を占うのか聞かないのですか?」
私が尋ねてみるも返事は返ってこない。
ちょっと待ってみたが、占い師はまったくもって動かない。
仕方なく、右から3番目のカードを人差し指で手前に引いた。
「めくりなさい。」
占い師に言われるがまま、カードをひっくり返した。
3つの太陽とライオンのような絵が描かれている。
「おぉぉぉっ。」
老婆の占い師は、動物の鳴き声かと思うくらい変な雄叫びを上げた。
私は驚いて後ろにのけぞり、こわばった。
「いいカードを引いたな。少し早いクリスマスプレゼントだ。」
金色に光輝くコインを3枚取り出し、テーブルに並べた。
「この3枚のコインを1枚ずつ触りなさい。」
私は、左からコインを順番に触っていった。
「これであなたは3つの願いを叶えられるようになった。願いを思い浮かべ、こう声に出して言うのじゃ。」
大きく息を吸い両手を上に広げた。
「ナマカンデモ」
老婆が大きくなったように見えた。
「えっ、ナマカ…。」
「コレッ、声に出して言うとおしまいじゃぞ。」
「あっ、は、はい。」
「願いが叶えられるのは、今日までじゃ。」
何がなんだかわからないままだが、再び占い師は何もなかったようにうつむいた姿に戻った。
「あの、おいくらですか?」と尋ねると、右手の人差し指を一本立てている。
占いで千円は安いし、一万円なのかな。
奇妙な体験ができたし、一万円をテーブルに置いて席を立った。
お財布をカバンに戻して、テーブルを見るとすでに一万円はすでになくなっていた。
「あっ、ありがとうございました。」
私は、足早にその場を去った。

それから、私は知り合いの居酒屋に向かった。
「こんばんは。」
「へい、いらっしゃい。」
威勢のいい声を聞いて、少し元気を取り戻した。
7人で満席になるカウンターとテーブルがひとつだけある小さな和風の居酒屋。
「みっちゃん、今日はちょっと遅かったね。」
短大の頃の友人の元彼である聡くんが、いつものように突き出しを出しながら話しかけてきた。
私の特等席でもあるカウンターの左端の席に座った。
「うん、今日は先に占いを見てもらってきたの。」
「ふ~ん、相変わらず占い好きだね。」
「それが、初めての占い師だったけど、何か変だった。」
「変って?」
「映画に出てきそうな老婆の占い師で、何だかよくわからなかった。」
別のお客さんにビールを出しながら、聡くんは狭いカウンターの中を機敏に動いている。
「いつもの麦焼酎のロックでいいかい?」
「うん。」
今日は、煮魚を頼むんだった。でも時間がかかるし、別のにしようか考えていた。
「何を占ってもらったの?」
「別に何かを占ってもらったわけではないけど、願いが叶うって言われた。」
「へ~、よかったね。どんな願い?」
「ナマカンデモって言ったら、願いが叶うって。」
「なんだそりゃ。」
そう言いながら、聡くんは鍋の蓋を取った。
「今日さぁ、ノドグロを釣ったから煮魚作ってみたんだよね。食べてみない?」
「えっ。」
聡くんは海釣りが趣味で、釣った魚をさばいて人に食べて喜んでもらうのが嬉しくて居酒屋を始めたのだった。
「やったぁ、食べる! 今日さぁ、煮魚食べたいって思っていて、でも時間がかかるから、別のもの頼もうかと思ってい…。」
あれっ、もしかして願いが叶ったということ?
いや、まさかね。しかし、本当に叶ったのなら、きちんと願いを考えなくてはいけない。一万円も払ったことだし。
「聡くん、今日は麦焼酎のロックはヤメて、ウーロン茶にして。」
「急にどうしたの?」
「うん。真剣に考えようと思って。」
「ははは。おもしろいね。」
ウーロン茶と煮魚を私の前に出してくれた後、聡くんは別のお客さんと会話している。
ひとつ願いが叶ったから、残りは2つ。しかも今日中って言っていたよね。腕時計を見るともうすぐ十時になる。あと2時間かぁ。定職に付きたいし、バックも欲しいし、海外旅行も行きたい。あっ、お金持ちになったら、働かなくていいし、そもそも定職に付かなくていいんだ。何でも買えちゃう。段々テンション上がってきた。お金持ちとしても定期的にお金が入ってくるようにしないとお金がなくなってしまう可能性がある。どういう風にお願いすべきなのだろうか。
「みっちゃん、大丈夫? 冷めないうちに煮魚食べたら?」
「あっ、うん。」
「そうだ。みっちゃんに言っておかないといけなかった。」
「何?」
「近々、お店閉めようと思って。」
「え~っ。なんでぇ。」
「都市開発か何か知らないけど、この建物が立ち退きになっちゃったんだ。移転も考えたけど、実家に戻って家業を継ごうかなっと思ってさ。」
「やだ。困る。私の唯一のいきつけのお店なのに、なくなったらどこに行けばいいのよ。」
「そう言われてもねぇ。」
申し訳なさそうな表情の聡くん。これ以上責めても可哀想だ。仕方ない。あと2つあるから、ひとつの願いを使っちゃおう。
この建物が立ち退きに合いませんように。
「ナマカンデモ」
お店の電話が鳴り、聡くんが話している。驚いている様子だ。電話を切り、こっちにやってきた。
「驚いたよぉ。この建物、立ち退きから外れたんだって。」
「わっ、本当に?」
「まったく。最初から決まってから話してこいよ。こっちの身にもなってみろってね。」
「それじゃ、お店はどうするの?」
「まぁ、とりあえず、続けるしかないね。」
「やったぁ。」
わぁお。これは本当に願いが叶う呪文なんだ。あと願いはひとつだから大切に決めないといけない。私の人生最大のチャンスがやってきた。ここに居たら、また願いを使ってしまうかもしれないから家に帰ろう。
「ねぇ、この煮魚、持ち帰ってもいい?」
「どうしたの?」
「用事を思い出したから、家で食べるね。」
「はいよ。」
煮魚を包んでもらい、帰ることにした。居酒屋を出て、老婆の占い師が居た場所を見たが、もう誰もいなかった。

足早に駅に向かって歩いていると、路上で野菜を販売しているおばあちゃんに声を掛けられた。
「お嬢ちゃん、無農薬野菜はいかがかね。」
無農薬野菜は値段が高いイメージだが、お手頃な価格表示に立ち止まってしまった。
「このカブなんか、今日の朝に収穫したものだよ。」
「でも、どう調理したらいいかわからないから。」
「なんだっていいさ。蒸してもいいし、お漬け物にしてもいい。そのまま生で食べたって美味しいよ。」
「生ってサラダにしてってことですか?」
ひとつ購入してもいいけど、料理はしないし、腐らせて捨てるかもしれない。どうしようか悩んでいたら、おばあちゃんはカブをガブリっと噛み、いい音を立てて一口食べてみせた。
「ほら、生で噛んでも大丈夫だよ。みずみずしくて美味しいよ。」
生で噛んでも? あれ、何か聞いたことあるフレーズ。
「あ~、ナマカンデモ」
「しょうがないね。ひとつサービスだよ。ほれ、もっていきなさい。」
「あっ。」

スポンサーリンク
 

スポンサーリンク